2007.8.11(土)14:00-16:00、あざれあ第三会議室
静岡県社会科教育研究協議会という団体が主催で、標記講演会が開催されると聞いて、参加してきました。講師はジャーナリストの堤未果さん。9.11の事件のまさにそのとき隣のビルにいた彼女の、アメリカの帰還兵やその母親などへのインタビューなどを通じて、アメリカの恐ろしい現状が浮かび上がる、貴重な話を聞くことができました。
●9・11とアメリカ~あの国にはまだ希望がある~
講演 堤未果さん
講演のポイント(と個人的に思った部分)は、以下のとおりです。
○9.11事件当時、隣のビルにいた堤さん
・世界貿易センタービルの隣のビルに勤務していた堤さんは、飛行機の衝突によるものすごい爆風や揺れを体験し、パニックになる人々と避難した。その記憶はPTSDとして残り、飛行機を見るとその記憶が蘇った。
○日本の尊いものに気づいた、アメリカのイメージが変わった
・小中高校と平和学習に熱心だった学校に通い、アメリカでは国連でも勤務していたが、平和についてはピンと来なかった。あの事件で、平和憲法をつくって、それを守ってきた人々がいたから、日本が平和だったことに気づいた。
・これまで堤さんが持っていたアメリカのイメージは、貧乏人や女性、マイノリティでも成功する国、という輝いたものだった。しかし、9.11以降、ビルが崩れる映像、ブッシュ大統領が「敵には話が通じない、先制攻撃するしかない」とこぶしを振り上げる映像が流され、戦争に突き進んでいった。マスコミが不安を煽ると、どこの国もあのようになると思う。
○イラクの医師たちが日本に支援を求める理由
・帰国後、立ち直った堤さんは、通訳の仕事を始めた。アメリカによる劣化ウラン弾の攻撃に曝され、日本に支援を求めるイラクの医師たちと話す機会があった。
・イラクの医師たちは、日本が被爆国だから私たちのことが分かるだろうと思い、医師や薬などを送ってほしいと求め、そして中東の人々が喉から手が出るほどほしい憲法9条を世界に発信してほしいと話した。
○騙されて入隊させられる
・アメリカの38歳のお母さんと話をする機会があった。自分の息子が騙されて入隊させられたという。契約どおりではなく、入隊後の奨学金が半分程度しか支払われず、職種も実際は選べなかったという。
・アメリカでは02年に教育改革法が成立し、全国学力テスト導入され、テストの成績の低い学校は予算が下げられることになった。テストではカンニングなどのインチキが多発している。
○帰還兵たちの「反戦の会」
・狙撃兵をしていた帰還兵に話を聞くと、「動くものはすべて撃て」と上官に言われたという。後ろに人が立つだけでその人を攻撃してしまうため、日常生活に対応できず、仕事もできない。
・帰還兵はホームレスになった人も多い。彼らは「イラク帰還兵反戦の会」をつくり、学校などで自らの体験や戦争の悲惨さを伝えている。
○貧困大国アメリカ
・アメリカでは、健康保険未加入者が4000万人、飢えで苦しんでいる人々が3100万人。食糧配給切符を受け取っている人が10人に1人という。
・借金漬けの人の名簿が派遣会社に名簿が回り、民間会社の傭兵として戦争に行くことになる。
・日本でも同じように格差が拡大している。
○日本の憲法9条
・日本の憲法9条は、アメリカ国際女性平和自由連盟、ナイロビ世界社会フォーラムなど、世界で絶賛されている。ボリビア大統領は戦争放棄を憲法に盛り込むことを宣言した。米兵にとっても、9条はあこがれである。
・私たちは平和の種をまき続けることが大切。人から人にバトンを渡すように。
●感想、その他
アメリカの現状にさほど詳しくない私ですが、豊かであるとばかり思っていたアメリカという国が多くの貧困層を抱えていて、それは戦争を遂行するために意図的に仕組まれている?らしいことが、非常に恐ろしく感じました。
そして日本も、昨今の格差拡大や教育基本法改悪などは、アメリカのように戦争を行うための布石のように感じました。つまり、日本もアメリカのような、恐ろしい社会になりつつあるのでは?という大いなる危惧です。
アメリカの政府は戦争を遂行する国家づくりを進め、マスコミは大衆を煽って戦争に賛成する土壌をつくっているかのようです。彼ら権力者はなぜ戦争をしたがるのか、よく分かりません。儲かるものなのかもしれませんが、戦争になれば多くの人々が犠牲になるわけですから、ふつうの人間としての感情を持っているならば、戦争を行うための社会をつくろうとは思わないはずなのですが(誰の命だって尊いのです。それを奪い傷つけるのが戦争)。それをそういう誤った感情を権力者が持っているのならば、正すよう声を上げていかなければなりません。
今、日本が手放そうとしている平和憲法9条。それが世界の宝であることが、今回の講演会でも再確認できました。9条を守り、平和の理念を具体化し、世界に広げる取り組みも、もっと頑張らなければなりませんね。
ブッシュ大統領が「敵には話が通じない」とこぶしを振り上げて…という部分で思うのは、話が通じないと思っても、根気よく話を続けていかなければならないということ。戦争をしたい勢力だけでなく、平和運動をやっている人の中にも、相手の話をよく聞かず、相手を批判してばかりという方が見受けられます(自分もそうならないよう気をつけなければなりませんが)。お互いの立場を考える、譲り合い・助け合いの精神が必要だと感じます。それは、世界平和や国家レベルの大きな話ばかりでなく、日常生活における個々人の態度としても必要だと思います。
マスコミ報道を鵜呑みにするのではなく、できうる限り自分で見聞きし、考えること。そして多くの人に広げることが、世界が平和になる力になるでしょう。多くの人と取り組むこと、次の世代に伝えていくこと、それが大切です。「バトンを渡す」という表現、好きです。
ご参考にどうぞ
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堤未果さんのブログ
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雑誌「世界」掲載『米国のもう一つの真実」(2005年五月号掲載)
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堤未果氏、「報道が教えてくれないアメリカ」を語る
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堤未果(つつみ・みか)さんの講演会