2010.9.25(土)13:30-16:00頃、エコハウスしずおか
以前は静岡で活動され、現在は奈良で活動されているクリコさん(ブログ「
できるだけエコライフ」の管理人)にお越しいただき、マレーシア・サラワク州の熱帯林の現状について話をしていただきました。併せて、DVD『森の慟哭』の上映も行われました。
●マレーシア・サラワク州の熱帯林の現状
・15年ほど前、サラワク州の先住民の方がが来静したり、アイセル21で「サラワクキャンペーン委員会」の人を招き学習会をしたりした。
・熱帯林の木材の多くを日本が輸入している。それ以上に深刻なのが、熱帯林の伐採後、パームオイルのプランテーションになること。
・植物油と言えばパームオイル。洗剤などにも使われている。
・ヤシ油の原料になるココヤシは、自然に生えている。
・その後、10年くらいサラワクの問題は聞かなくなった。それは情報が入ってこなかったらであり、現地の状況は深刻さを増していた。
・今、バイオ燃料ブームの到来で、サラワクの熱帯林が話題になっている。サラワク熱帯林保護に取り組んでいた活動家は、10年ほど当局にパスポートを取り上げられていた。その人がこの前来日し、お話を伺うことができた。
・
FoEジャパンが作成したDVD『森の慟哭』は、実は活動家でない方が撮影したもの(活動家は熱帯林に入れない、あるいは撮影ができない)。
・自生のココヤシはヤシ油になり、アブラヤシはパームオイルになる。アブラヤシは100%プランテーション。最悪なことに、近くにオイル製造のための工場も造られてしまう。
・現在、先住民をFoEマレーシアがサポートしている。
・スイス籍の熱帯林保護・人権活動家、
ブルーノ・マンサー氏は行方不明になっている。
・レアメタルが先住民居住地で発見され、先住民の生活が脅かされている。
・サラワク州はマレーシアの37.5%の面積を占める。
・多様な民族構成、宗教。ダヤクと呼ばれる先住民。
・日本、中国への輸出が多い。丸太や合板。
・日本の木材自給率は18.4%(2004年)。マレーシアからの輸入は6.3%。
・ロシアの木材が中国の特区で割り箸に加工されている。
・2000年頃までは、サラワクの森は開発されていなかった。
・
日本製紙連合会による植林ライセンス地域。(サラワク)州が伐採件を企業に売る。売ると→伐採→先住民が入ってきて焼畑→プランテーションに→アカシヤを植えて紙の原料に。
FSC(森林管理協議会)とは違う。
・リサイクルペーパーは国産。
・「10年後に返す」と言って先住民から土地を取り上げる企業。土地を取り上げることが問題。(※どこの国でも、企業は搾取するものだ。日本の労働者が過労死するまで仕事をさせられるというのも、似たようなものだろう)
・「何年以内に木を伐採する」と人知れず告知(!)して、後で取り上げる。
・州政府は、先住民の伐採権を認めない。(※先住民には先住民が守ってきたルールがあるのだろうが、それを認めず、違うルールを押し付ける州政府。先進国も似たようなものだが)
・休耕地が狙われている。
・「森の民」が貨幣経済に吹き込まれている。
・慣習地をめぐる係争が、140件も起こっている。
●DVD『森の慟哭』
・パーム油の原料となるアブラヤシの90%がマレーシアから輸入されている。
・熱帯林が伐採され、プランテーションが拡大していく。
・住民(先住民)は、林道を封鎖し、土地を守る闘いをしている。
・プランテーションでは、安い賃金で働かされる。
・(農薬などで)住民に健康被害が広がり、貯水池の汚染が深刻化している。
・大雨で農薬を含んだ土が流出していく。
・有害廃棄物の不法投棄も行われている。
・水源が汚染され、(住民たちが使える)農地が狭められている。
・日本には、合板などが輸入されている。
・住民は森がないと食料を得られない。森は生物多様性をはぐくんでいる。
・森を奪うことは、住民が危機に瀕する。
・企業が森を破壊する行動に、消費者が加担している。
●意見交換など
・サラワク州から中国を経由して、日本に入ってくることもある。
・インドネシア製のものは安いので、買われていく。
・アカシアやユーカリは早く成長するので、紙の原料として使われる。
・スギの間伐材は、紙に混ぜるのは難しい。マツ系のものが紙に向いている。
・間伐材を製紙工場の別の場所(紙製品自体ではなく、梱包用のダンボールなどで)使えば、間伐材を紙製品だと使用したと認められる「クレジット方式」という(インチキな)方法もある。
・
FSC(森林管理協議会)の認証制度は、持続可能な森林に対して認める制度。
・パームオイルにも認証制度はあるが、査定が甘い。
・サラヤのパームオイルには認証がついている。
・APPは認証されていない。APPはアジアペーパーパルプという会社。
・認証にもいろいろな種類がある。
・プランテーションのために泥炭地を乾燥させることで、CO2が大量に排出される。→京都議定書では計算対象にはなっていない(※国益がぶつかり合って、難しい。もっとも、東南アジア以上に先進国が大量に温室効果ガスを排出していることが問題だろう)
・ウラン鉱山近くに住んでいる先住民が被害を受けている。アメリカでは、放射性廃棄物貯蔵ダムの堤防が崩れ、ナバホ族が飲料水として使っていた川に放射性廃棄物が大量に流れ込むという大変な被害が出た。
・パプア=ニューギニアも問題。インドネシアも違法で、日本に22%、中国に27%輸出しているが、中国分の一部は日本に流れている。
・以前は軍が違法伐採をしていたが、現在は取り締まる側に回っている。
・再生紙も輸入されている。
・私たちにできることは…
・洗剤を買うとき、米ぬか油製のものを選べば、パームオイルによる環境破壊に加担しなくて済む。
・店に、こういう環境破壊があると言うことを知らせる。
・古紙回収にまわす。
・(再利用できる)
P箱がないので、ダンボールが使われている。
・2R(発生抑制=リデュース、再使用=リユース)キャンペーン(
こちらの中ほどあたり)。リサイクルは不可、燃やすよりはマシな程度。
・容器リサイクル法施行後、1升ビンが減った。
・不当に安い価格で木が伐採されているから、リサイクルよりもバージンパルプが使われてしまう。
・新潟では、
ウッドマイル税というのが検討されている。
・環境にかかる負荷も考慮すべき。価格に反映させる。
・処分にかかる経費は、ビンのときは業者が負担していたが、ペットボトルは行政が負担している。(※業者が負担するようなしくみにすべき。)
●感想、その他
パワーポイントで作成された資料は上手にまとめられていました。熱帯林の環境破壊について知ることができる、有意義な話し合いの場となりました。聞き慣れない単語も多く、自分の勉強不足を痛感しましたが、後で調べるきっかけになりました。
熱帯林の問題については、環境破壊が進んでいるだろうとは思っていましたが、実際に詳しい方の話を聞くと、環境破壊の深刻さが具体的に分かり、自分の認識不足を改めて感じました。
先進国の都合で、先住民の人権が侵害され、貴重な自然が失われている…深刻な事態であり、是正しなければならないと思います。
意見の中で、「環境問題をやっているグループすら、バージンパルプの紙を使っているのが現状」というのがありました。価格が安くて環境に悪いものをあえて選ばず、価格が高くても環境にやさしいものを選ぶのは、現実には難しいです。資本主義の枠組みの中で誰もが生きざるを得ないわけですが、できる限り環境にやさしいものを選んでいかなければならないと思います。
個人的に改めて思ったことは、以下のとおりです。
・先住民の生きる権利を侵してはいけない。
・持続不可能なプランテーション経済は、やってはいけない。続けていけば、必ず破綻する。そうなれば、私たち人類は生きていけない。
・経済規模の拡大は環境破壊を招く。経済規模は縮小していかなければならない。
・私たちの日常生活が、深刻な環境破壊や人権侵害を招いている。それらの事実を知り、行動していくことが大切。
お読みいただき、ありがとうございました。
~エコバッグを持ってお買い物~